ためしてガッテンのあれ

本放送を見ていないのでどういう系で実験したのか判らないんだが、

20℃の水が凍り始めるまでに100分かかるのに対し、100℃の熱湯は30分で凍り始めたとするある研究論文を紹介
「水よりお湯の方が早く凍る!」 「ためしてガッテン」実験は本当か : J-CASTニュース

というのを見ると、昔の冷凍冷蔵庫についてた製氷用の皿での実験なのかな。

本当なら、最低でも

  • 庫内温度の推移
  • 100度近辺の水の温度変化
  • 常温の水の温度変化

を計時記録したいのと、可能なら庫内環境を同一にしてサンプルが相互に影響を与えないようにしないと意味がない*1ので下準備があれだったりする。

今の我が家にある冷凍冷蔵庫は自動製氷なので製氷皿が無いため、とりあえず 200mL のガラス製コップ一杯に100度、30度の水を入れて凍らせてみた。

11:10に入れて、二時間経過した時点で見ると、30度のものがうっすらと表面に氷が張っていた。100度のはまだ水のまま。
三時間経過。相変わらず100度のものは水のまま。30度のは徐々に凍り始めてる。

まぁまともな系じゃないので話半分に見てもらった方がいいと思う。時間が取れればもう少しまともにやってみたい。

蛇足

というか、さすがに100字だけで書き込むのはつらかったのでここでブコメの補足。

別にこの現象を否定する気はない、というか、実験結果でこうでした、といわれれば、ああそうですか、としか言えないんだけど、一般に、ある物質に一定のエネルギーを与え続けた場合、その物質が純物質であれば比熱は一定なので、物質の温度は一定間隔で上昇していく。逆に、エネルギーを吸収していけば一定の間隔で温度は下がっていくわけですよ。

で、これ以外に、物質が相変化する、つまり気体から液体、あるいは液体から固体やその逆に変化する際に必要な熱量というのもまた別に必要で、これ既に多くの物質で調べられていて、例えば水が氷から水になる、あるいは水から氷になる際に必要なエネルギーは 6.0 kJ/mol だそうです。

なので、

水を凍らせるために必要なエネルギー = (i)0度にまで冷却するのに必要なエネルギー + (ii)0度の水を0度の氷に換えるためのエネルギー

で表され、同量の100度の水と30度の水なら(ii)のエネルギーは一定なので、(i)の差分のみが問題になるわけですよ。

この辺は高校化学の範疇だし、だから半ば直感的にこの結果が気持ち悪いなと思ったわけですわ。

蛇足2

大槻氏をフォローする訳じゃないが、氏のHPを見る限り、再現性に言及したのは以下の部分のみ。

本当に普通の水で実験し、再現実験をした人がいるのでしょうか。どんな科学者のグループが再現実験をやっても同じ結果が出なければ、ひとつの物理現象とは言えません。
http://ohtsuki-yoshihiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/72_2893.html

普通に読めば再現性を否定してるようには読めないんだけど。

既に古くから同じ現象が確認されているみたいだけど、日常語の「再現性」と科学語の「再現性」は若干違って、科学の上では「示された手順・条件に従う限り、誰がいつどこで試しても100%同じ結果が保証される」程度の厳密性が必要なので、単に昔からやっていた、たまたま出来た、程度では再現性が保証されているとは到底言えない。

そもそも再現実験をするには前提条件を整えないと駄目だけど、どんな条件で100%再現できるの?という点で未だに議論があるわけで、経験則的にたまたま出来た、というだけならまだまだ議論のテーブルにはほど遠いわけで。別に物理学に限らず、「どんな科学者のグループが再現実験をやっても同じ結果が出なければ、ひとつの物理現象とは言え」ないのは、言うまでもないような最低限のルール。

*1:100度の水のすぐ側で常温水を静置したら、放熱に伴って周辺温度が上昇してしまうし、特に100度近辺の水では庫内温度の変化というか対流の想像がつかないので、常温、高温の両サンプルは別々に凍らせた方がいいと思う。水温を測定して0度に達するまでの時間を見ればいいかと。