Whois の Domain Status について

みなさん、ドメイン*1取ってますか?最近は ICANN が小銭稼ぎに始めたクソみたいな新 gTLD 制度が広まってしまったおかげで、安いドメイン名が跋扈した結果ゴミ以下のまとめサイトやいかがでしたかブログが至る所に生えてしまってネットの治安はもう最悪、本当にどうしようもないですね!逆に、ドメイン名ベースのゴミブログフィルターが捗るので、ある意味では良かったのかもしれません、ポジティブに考えれば。

さて、気になるドメイン名があればすぐ Whois しちゃうことも多いと思いますが、そこに記載される情報を気にしている人って案外少ないんじゃないでしょうか。意外にも Whois サーバーの返す "Domain Status" に関して日本語でまとまった資料がなかったので、まとめておこうと思います。

本稿では特に旧来の gTLD によるドメイン名、すなわち .com/.net/.org であるドメイン名を対象にしています。2000年以降に追加された Affilias/Neulevel 系列の .info や .biz 等、さらにそれ以降の新規 gTLD や sTLD は原則 ICANN の指針に従った形になっているはずなのでほぼ変わらないと思われますが、ccTLD の場合は各国の規制当局(日本だと JPRS)の意向によって必ずしも本稿のケースが当てはまらない場合があるようですので、気になる場合はドメイン名の管理当局(特に ccTLD の場合は各 NIC)に照会するようにしてください。

Whois サーバーの返す情報

言わずもがなですが、改めて。

レジストリ(registry)
TLD におけるドメイン名のデータベースを維持管理する機関、例えば .com/.net だと Verisign、 .org は PIR。身近な .jp は JPRS が管理しています。
レジストラ(registrar)
登録者からドメイン名の登録申請を受け付け、その登録データをレジストリのデータベースに登録する機関、例えば「お名前.com(GMO)」や「GoDaddy」、「Gandi.net」など。

例えば以下に示すのは twitter.com の Whois 情報です。どれだけ人気のサイトであろうが、ゴミブログであろうが、 Whois の前では皆平等です。当ドメイン名の場合、.com ドメインなのでレジストリVerisignレジストラCSC (Corporation Service Company) となります。

$ whois twitter.com
[Querying whois.verisign-grs.com]
[whois.verisign-grs.com]
Domain Name: TWITTER.COM
Registry Domain ID: 18195971_DOMAIN_COM-VRSN
Registrar WHOIS Server: whois.corporatedomains.com
Registrar URL: http://www.cscglobal.com/global/web/csc/digital-brand-services.html
Updated Date: 2018-12-07T19:32:35Z
Creation Date: 2000-01-21T16:28:17Z
Registry Expiry Date: 2020-01-21T16:28:17Z
Registrar: CSC Corporate Domains, Inc.
Registrar IANA ID: 299
Registrar Abuse Contact Email: domainabuse@cscglobal.com
Registrar Abuse Contact Phone: 8887802723
Domain Status: clientTransferProhibited https://icann.org/epp#clientTransferProhibited
Domain Status: serverDeleteProhibited https://icann.org/epp#serverDeleteProhibited
Domain Status: serverTransferProhibited https://icann.org/epp#serverTransferProhibited
Domain Status: serverUpdateProhibited https://icann.org/epp#serverUpdateProhibited
Name Server: A.R06.TWTRDNS.NET
Name Server: B.R06.TWTRDNS.NET
Name Server: C.R06.TWTRDNS.NET
Name Server: D.R06.TWTRDNS.NET
Name Server: D01-01.NS.TWTRDNS.NET
Name Server: D01-02.NS.TWTRDNS.NET
Name Server: NS3.P34.DYNECT.NET
Name Server: NS4.P34.DYNECT.NET
DNSSEC: unsigned
URL of the ICANN Whois Inaccuracy Complaint Form: https://www.icann.org/wicf/

For more information on Whois status codes, please visit https://icann.org/epp

細かい登録者情報は実際のレジストラである whois.corporatedomains.com に問い合わせればわかりますが、大まかな情報を得るだけであれば上記で十分です。

  • ドメイン名が登録された日: 2000-01-21T16:28:17Z
  • ドメイン名の期限が切れる日: 2020-01-21T16:28:17Z
  • ネームサーバー: 8サーバーからラウンドロビン
  • ドメインステータス: 4種類(clientTransferProhibited, serverDeleteProhibited, serverTransferProhibited, serverUpdateProhibited)

さて、このうち、「ドメインステータス」に記載されている情報について詳説しましょうというのが本稿の趣旨です。下記にあるように、英語版の元記事は以下のURLに記載がありますので、気になる方は原典を当たってください。。

For more information on Whois status codes, please visit https://icann.org/epp

ドメイン名の一生

ドメインステータスについて書く前に、ドメイン名の一生について記載しておきます。その方がステータスコードの理解が進むので。

1日目
ドメイン名を登録した日。
5日目
登録から5日目までは登録猶予期間(Add Grace Period)として設定されます。これはユーザーの勘違いやスペルミス等による登録間違いを防ぐために設けられる猶予期間であり、この期間内であればレジストラを通じてドメイン名の登録を取り消すことができます。
60日目
登録から60日間は、ドメイン名を登録した際に利用したレジストラから別のレジストラに管理を移管すること(ドメイントランスファー)はできません。これはレジストリによってドメイン名の移管操作がロックされるためであり、登録から60日目にそのロックが解除されます。この日以降は他のレジストラへのドメイントランスファーが可能になります。
365日目(失効日)
登録から1年経つと、この日までに更新操作を行わない限りドメイン名は失効します。ドメイン名が失効するとDNSによる名前解決ができなくなり、関連するサービスを正常に維持することができなくなります。失効したドメイン名は更新猶予期間(Grace Period)に入ります。
405日目(失効から40日目)
更新猶予期間(Grace Period)が終了し、30日間の請戻猶予期間(Redemption Period)に入ります。この期間に入ったドメイン名はレジストラの管理を離れてレジストリの管理になります。レジストラからレジストリに特別な申請があれば、レジストラに管理が戻されます。この申請は大半がユーザーによる更新忘れが原因だと思われますが、一般には対応費用がかなり高額になるようです。
435日目(失効から70日目)
請戻猶予期間が終了し、削除保留期間に入ります。この間、ドメイン名はレジストリのDB上からの削除を待つことになります。
440日目(失効から75日目)
削除日。人の噂も75日、ではないですが、失効日から大凡75日目に削除処理が行われます。削除されたドメイン名はレジストリの管理台帳から抹消され、一般に開放されます。 Whois 上では「NOT FOUND」となり、登録ができる状態に戻ります。
更新猶予期間(Grace Period)について

失効したドメイン名については、レジストリは自動的に(強制的に)ドメイン名の有効期間を1年分更新し、その費用をレジストラから徴収するという仕組みになっています。この仕組みだとユーザーが更新する意思のないドメイン名についてまで更新料を支払うのはレジストラにとって負担でしかないため、失効後40日間設定されるこの更新猶予期間内にレジストラからレジストリドメイン名の削除申請を行うことで自動更新にかかる費用がレジストリから返金されるようになっています。
ユーザー側から見た場合、仮に更新忘れによって失効したドメイン名であってもこの期間内であれば比較的安価な手数料で回復することが可能です。レジストラから削除を通告されたドメイン名はこの後請戻猶予期間に移行します。一方、ユーザーから更新を依頼されたドメイン名は再度更新され、通常運用フェーズに戻ります。

EPP コードとは

EPP(Extensible Provisioning Protocol)コード、すなわちドメインステータスコードとはその名の通り登録されたドメイン名の状態を示すコードです。登録されているドメイン名は全て、いずれか一つ以上のステータスコードを持ちます。ドメインステータスコードを通じ、登録されているドメイン名がどのような状態にあるのかを知ることができ、しいては運用が止められてしまった場合の原因や現在の状態、あるいは放棄された後一般に開放されるのはいつになるのか、等の情報を知ることができます。

ドメインステータスコードにはサーバーコード、クライアントコードの二種類があり、前者はレジストリによって設定されるものであり、後者はレジストラによって(場合によってはエンドユーザーからの要求に応じて)設定されます。いくつかのサーバーコードはクライアントコードに優越します。いずれのステータスコードについても、上に示すとおりドメインステータスコードWhois の結果の一部として返されます。

以下に、EPPコードとして標準化された17のステータスコード一覧を示します。また、併せて RFC3915 で規定される RGP ステータスコード和訳)も示します。

サーバーステータスコード

レジストリによって設定されるドメインステータスコードの一覧。

EPP コード 意味 補足
addPeriod 登録猶予期間(Add Grace Period)内にあるドメイン名。 -
autoRenewPeriod 失効後、自動更新中。 失効したドメイン名がレジストリによって強制的に更新された場合に表示される。
inactive ネームサーバーが設定されていない。 ドメイン名の登録はされているが、ネームサーバーが正常に設定されておらず、名前解決が行われていない状態。
ok OK! ドメイン名が正常に稼働している状態。
pendingCreate 登録待ち。 新規募集が行われる TLD における Sunrise 期間(商標権者による優先登録期間)中に登録されたドメイン名。Sunrise 期間終了後に割り当てられるドメイン名に表示される。
pendingDelete redemptionPeriod もしくは pendingRestore のいずれか、もしくは削除保留期間として削除待ちの状態。 -
pendingRenew 更新待ち。 (失効前に)更新指示を受けたたため更新手続き中。
pendingRestore 請戻猶予期間内にレジストラレジストリに管理の返還を要請した。 レジストラへの再割当作業中に表示される。
pendingTransfer ドメイン名移管(トランスファー)の作業中。 異なるレジストラに移管作業中に表示される。
pendingUpdate ドメイン名情報の更新中。 ドメイン名に付随する情報(Whois 情報)の更新作業中に表示される。
redemptionPeriod 請戻猶予期間中。 請戻猶予期間は30日間あり、その後5日間の削除保留期間を挟んでドメイン名は抹消される。
renewPeriod レジストラによって明示的に更新処理が行われた。 レジストラによる更新処理が行われた場合に表示される。レジストラによってはユーザーの意思にかかわらず自動的に更新処理を行うケースがあり、その場合に表示される。
serverDeleteProhibited 削除不可 希なコードであり、当該ドメイン名は法的な紛争状態にある等で削除が行えない場合に表示される。また、一部のレジストラでは本ステータスコードドメイン名を保護するより強力な手段として用いている場合がある。
serverHold DNS による名前解決不可 ネームサーバーは設定されているものの、名前解決が正常に行えない場合にレジストリによって設定される。
serverRenewProhibited 期限更新不可 希なコードであり、当該ドメイン名は法的な紛争状態にある等で更新が行えない場合に表示される。また、登録者の住所情報等が不正確な場合にも表示される。
serverTransferProhibited 移管不可 ドメイン名の登録から60日間経過しておらず他のレジストラへの移管が許可されていない場合に表示される。また、登録者の住所情報等が不正確な場合にも表示される。それ以外では比較的希なコードであり、当該ドメイン名は法的な紛争状態にある等で他のレジストラへの移管が行えない場合に表示される。一部のレジストラでは本ステータスコードドメイン名を保護するより強力な手段として用いている場合がある。
serverUpdateProhibited 情報更新不可 希なコードであり、当該ドメイン名は法的な紛争状態にある等で Whois 情報の更新が行えない場合に表示される。また、一部のレジストラでは本ステータスコードドメイン名を保護するより強力な手段として用いている場合がある。
transferPeriod 移管作業完了 異なるレジストラへの移管作業が正常に完了した。

クライアントステータスコード

レジストラによって(場合によってはエンドユーザーからの要求に応じて)設定されるドメインステータスコードの一覧。一般には、レジストラからレジストリへの情報伝達手段としても使われる。

EPP コード 意味 補足
clientDeleteProhibited 削除不可 ドメイン保有者以外からの未承認削除等を防ぐために設定される。
clientHold DNS による名前解決不可 未支払い、法的紛争や削除待ち等の事由により名前解決ができない状態にある。
clientRenewProhibited 期限更新不可 法的紛争や削除待ち等の事由により更新ができない状態にある。
clientTransferProhibited 移管不可 ドメイン保有者以外からの未承認移管等を防ぐために設定される。
clientUpdateProhibited 情報更新不可 ドメイン保有者以外からの未承認情報更新等を防ぐために設定される。特にネームサーバーの情報更新を防ぐことでドメイン名ハイジャッキングを防ぐ目的で設定されることがある。

まとめ

いかがでしたか?ドメイン名にまつわるいろいろをまとめてみました。快適なドメイン管理ライフの一助になれば幸いです。

*1:ドメインドメイン名、ドメインネーム等複数呼び方があると思いますが、本項では JPNIC の記載に従いドメイン名とします。