GL09PをUnlockしてみた

たまたまGL09Pが手に入ったので、価格.comの口コミ上で報告のあったdc-unlocker を使ったSIM Lock解除を実際に試してみました。費用は 7 credits(=€7、最近のレートで大体1000円くらい)。

結果から言えば、サクッとアンロックできてしまいます。注意点は、作業時に dc-unlocker からの操作で端末をデバッグモードのような状態に持っていく必要がありますが、 Windows 8 ではこの状態のドライバ(Diagnostic Port のドライバ)を読み込むことができないため*1、Win 7(もしくはVista)で作業する必要があります。

一度SIM Lockを解除してしまえば、APN 設定を行って以前の Pocket Wifi シリーズのような形で使用することができます。APNの設定画面上ではEmobileの番号(A番号)とSoftBankの番号(B番号)のそれぞれについて設定を行うことができますが、単一番号しかもたないSIMではB番号側の設定が適用されるようです*2

ただ、この端末は、

FDD-LTE
Band 3
TDD-LTE
AXGP(Band 41 で規定された周波数帯のうち、2.5 GHz帯のみ
UMTS
Band 1/5/9/11

という割と中途半端Softbank/Emobile網での使用にほぼ特化した設計になっています。

国内だと、FDD-LTEでBand 3展開をしているのはEmobileと東名阪地域におけるdocomoのみであり、またAXGPに繋ぐにはWCPのMVNOであるSoftbankか東海コミュニケーションズしかなく、それより高周波側にはそもそもサーチに行かない、という状況です。

今更W-CDMAルーター兼モバイルバッテリーとして活躍するしか能がないのは残念な感じですので、もうちょっとまともな使用法を考えてみましょう。

接続帯域固定

この端末は他のモバイルルーター同様、Web UIから設定を行う方式になっています。が、なぜかCSS/スタイルシートで設定項目が多数隠されています(display: noneになっている要素が多数ある)。

ですので、Firebug を使うなどして隠しエレメントを表示させると、3G/4G固定項目があったり、標準設定のAPN接続用ID/パスワードを抜き取ることができたりします。

また、表示画面は JQuery を駆使した使いにくいいい感じに表示されたりする今風のUIですが、実際には設定項目は PC 用の設定ページにログイン後、 HTTP Get で設定することも可能です。

4G固定
http://192.168.128.1/goform/goform_set_cmd_process?isTest=false&goformId=SET_BEARER_PREFERENCE&BearerPreference=Only_LTE
3G固定
http://192.168.128.1/goform/goform_set_cmd_process?isTest=false&goformId=SET_BEARER_PREFERENCE&BearerPreference=Only_WCDMA

という感じ(ホストアドレスは環境に応じて変えてください)。

docomoのSIMで使う

東名阪地域であれば、docomoが必死でLTE 1.8GHz帯/Band3の充実に努めているため、割とよく電波が入ります。壊滅的な Xi 2.1GHz帯/Band1に比べれば混雑度合いは随分マシですし、端末が UE Category 4 対応機でもあるため、条件が良ければ理論値 150MBps に迫ることも可能でしょう(Wifi 側が 2.4GHz 帯オンリーの 11n で Max 150MBps ですのでお察しではありますが)。

ただ、東名阪エリア以外の地域では、使えるバンドが UMTS Band1 のみとなってしまい、FOMAプラスエリア(UMTS Band 6/19)には非対応であるため、郊外エリアでは絶望的な状況になるものと思われます。Emobile機ですので UMTS Band9 にも対応していますが、それも結局東名阪限定じゃん、という話。

なお、本機でISP各社が提供しているXi向けAPNを使用する場合、やはりXiのみ接続可能で、3G Fallbackはできないので注意が必要です。潔くmoperaを使いましょう。

SoftBankのSIMで使う

各所で報告がある通り、 iPhone 5 以降のLTE SIM/APNを使えば AXGP/UltraSpeed 網にも接続可能という話があります。最近であれば iPhone 5s/5c が格安でばらまかれており入手は容易ですし、何より月額料金が比較的安価に済む、というメリットがあります。

EmobileSoftBankに買収されて以降、残念ながらEmobileは草刈り場となってしまった感があり、SoftBankユーザーであればEmobile網に乗り込むことが可能となっているため、正直Emobileを専用で契約するメリットが薄れてしまっています。

残念ながら本機はLTE Band1には非対応なので、SoftBankが本腰を入れている4G LTE網には繋げませんが、それでも jpspir/sirobit なSIMで試すと、4G/3Gともにpanda-world.ne.jpなアドレスで外界に繋ぐことができることを確認できました(蛇足ですが、自己責任で。

KDDI

技適の通り、KDDI/LTEのSIMを刺しても、Wimax2+での接続はおろか、電波すら掴みませんでした*3

本機はエリア圏外(Out of service)とサービス圏外(No service)を区別するのですが、エリア圏外表示であればそもそも全バンドで掴めそうな電波が飛んでいない、ということがわかるものの、サービス圏外表示だと電波を掴んではいるけれど網登録ができていないだけなのか、SIMカードに対応する電波を掴んでいないだけなのかの判別が付かず、WiMAX2+エリア圏内で KDDI/au の SIM を挿入した状態では No Service 表示だったので、もしかしたらいけるかなと思ったけどやっぱり駄目でした。まぁ掴んだら掴んだで、どう考えても技適的にはアウトですしね…。

モデムチップはQualcomm製ですし、BandもAXGPと同じグループ(B41)ですので、例の何かでごにょごにょすればあるいは、という気がしなくもないのですが、明らかにアウトなので止めておきましょう。

端末単体の使い道としてはこんなところでしょうか。

付属SIMの使い道

GL09P に付与されるSIMカードは、Emobileの番号(A番号)とSoftBankの番号(B番号)の両方が入ったDual number SIMになっています。

単一番号でMVNOローミング的な処理をしてくれると有り難いのですが、まぁ契約者数だとかローミング設定だとかという大人の事情があるのでしょう、各社網に乗り入れる際に番号を使い分けるようになっています。

あいにく、単一番号が前提の通常スマートフォンなどではSoftBank側のB番号が優先的に認識されてしまうようで*4Emobile網への接続が絶望的になっています。本来Dual Number SIM自体はそう珍しいものではなく、中国など複数の接続規格が乱立している場合には、各々の番号を持たせたSIMを発行しておいて両規格対応の端末側で切り替える、ということは普通に行われています。ただ、その際にはツールキットも併せて提供されるのが一般的であり、今回のように端末側で触れる部分がない、というのはイレギュラーと言っても過言ではないと思います。

で、SoftBankのB番号ですが、GL09Pから引っこ抜いたAPN情報(axgpdata.softbank.ne.jp)をもとにNexus5でLTE B1に繋ごうとしても、接続できません*5。GL09PはSoftBank網だとAXGPもしくはUltraSpeed(UMTS Band 11)への接続のみ可能になっていることから、網側で何らかの制限を行っているものと考えられます。

ただ、UltraSpeed端末である007zでは接続できた、という話もあるようなので、もしかしたらそこまでシビアな制限、たとえばIMEIによる接続制限などはかかっていないのかもしれません。ですので、例えば301FではAXGP網のみ接続可能、とかいう話もある、かも?

結論

真面目に使いたいなら、値崩れした白ROM買ってきてiPhoneのSIMを刺して使うのが一番良さげ。

正直端末としての出来はそこまで酷評するレベルではないように思いますが、対応バンド設計がキャリア展開と密接すぎて再利用性が悪いことを考えると、正札で契約された方はご愁傷様ですね、という感想を持ってしまうのも確かです。また、エリア展開についても

  • AXGPwillcom基地局をベースに展開されていることは有名な話
  • バックアップとなるべきEmobileもエリア展開は都市部中心、DC-HSDPA の帯域を削ってLTEに振り替え中
  • SoftBank 3G も Band 1(IMTバンド)、8(プラチナバンド)ともに非対応であり、悪名高い Ultra Speed (Band 11)しか選択肢がない

という感じで、地方部ではまず役に立たないものと思われます(その代わり、山手線近辺はアレですが、大都市圏では4G固定でもあまりストレスを感じずに使えました)。

みんな薄々感づいているでしょうが、wifiセット割の親回線として使うのが譲歩できる限界でしょう。ちらほら見かける本体一括ゼロ円で契約できれば、家族でソフトバンク系のスマホ回線を二回線持っていればほぼ実質タダになるわけで、それ以外で買うのは、今回のように玩具として買う、というようなレアケースでもなければ割と博打だと思った方がよいでしょう。

また、光ファイバーなどの有線契約を解約してこれに一本化しよう、とかいうアフィリエイトサイトのようなものもたまに見かけますが、大枚をはたいて愚にもつかないようなことをするのは、止めておいた方が賢明でしょう。

そもそも無線キャリアで富豪的なネットワークの使い方をするのは愚か以外何物でもないわけで、何のためにキャリアが死に物狂いでオフロード戦略練ってると思ってるんだという話なわけです。Emobile/eAccessといえばADSL時代から続く有線キャリアの老舗ですし、現に無線契約者向けの優遇プランも持っているので、速度制限云々という話をする前にこちらを検討されることをオススメしたいですね。

*1:一部のサイトでこの問題を解決するため、野良ドライバを導入するよう勧めるような記述がありますが、出所不明なシステムファイルを読み込ませるのは自殺行為ですので絶対に止めましょう

*2:ただここはちょっとよくわからなくて、B番号設定が4Gモジュール、A番号設定が3Gモジュール向けなのかなという気がする。Xi向けISPを契約しても、3G fallbackができないので無線モジュールが複数入ってるような雰囲気があるのだけど、ただIMEIは1つしか持っていないし、欧州で現地SIM(TIM/O2)にて使ったときは3GでもB番号側の設定で繋がったので、単なる番号設定だけの問題なのかなぁ…

*3:音声契約でfor Data契約済み、APNは kwx2.au-net.ne.jp

*4:もしかしたらGL09Pで最後に接続した網側の番号が生きてるのかも

*5:iPhone 5s の SIM とこの Nexus5 で panda-world.ne.jp に接続可能なことは確認済